大人になったら

気に入った曲を繰り返し聴く癖が自分にはある。同じアーティストの別の曲を新しく聴いていくよりも、一つ気に入った曲を何度も聴く方を選ぶことが多い。ある種の怠惰だったり、保守性だったりするんだろうなと思っている。ご飯に関しても同じように、新しい食べ物への興味が弱く、気に入ったものを食べ続ける傾向がある。

この間、the brilliant greenの「そのスピードで」と「There will be love there」、「冷たい花」にハマっていた。久しぶりに夜間にゆっくり作業する時間が取れたこともあって、珍しく、別の曲を聴いてみようと思い立った。そこで検索して、読んだ記事がこれ。

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この記事でGLIM SPANKYというバンドを知り、聴いてみた。

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この曲を聴いて、良いなと思った。とにかく懐かしい感覚がよみがえる。シャウトも、存分にやるギターも良い。

「こんなロックは知らない 要らない 聴かない君が上手に世間を渡っていくけど」

「大人になったらわかるのかい」

このあたりの歌詞、「君」「大人」に対する距離感、その他者化は今となっては少しナイーブな感じがしなくもない。しかし、この感覚はたしかにあの時の俺たちの実感だったのではないか、と思う。一方でいわゆる「普通」になんとなくうまく馴染めない感覚を覚え、他方で自分にはやることがあって、どうにか居場所があった。その居場所になっているのがロックやらバンドやら、そのあたりだった。ロックバンドをめぐるこういうあり方を、不幸ぶってるとかウジウジしてるとか言う声を聞いたことがある。そしてそれは望ましい態度ではない、とも。まあ、そうかもしれない。しかし、馴染めなかったという自覚を持つ俺たちはこういう所作の中でたしかに立つことができた。それだけでもまずは十分じゃないかと思う。

懐かしい。なんとなく、夏の新宿や吉祥寺あたりで汗をかきながらギターを背負って歩いたことを思い出す。明るい夏の夜のアスファルトの匂いを思い出す。地方に移り住み、家族を持った今の状態には納得しているが、あの頃の東京には郷愁を覚える。